『ひょっとこ』 論
A study on Hyotoko of Akutagwa Ryunosuke
- 일본어문학회
- 일본어문학
- 日本語文學 第48輯
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2010.02281 - 296 (16 pages)
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本作品は大正四年帝国文学に発表された芥川の初期作品に屬するもので、親父の代から下町育ちで繪の具屋をやっている山村平吉のことを描いた短編である。作品は酒を樂しみ、酒に醉うとひょっとこ面を被って馬鹿踊りを踊る剽輕な彼の船上での頓死を描いている。作者芥川は、この作品以降羅生門や鼻芋粥をはじめ、次々と近代人の心理を銳く暴き描寫した作品を發表するようになる。本作品は芥川の王朝物や藝術至上主義作品などに比べるとやや知名度は低いが、初期作品として、平吉という人間自體を照明したところに重みがあると言える。平吉は酒に酔うとひょっとこ面を被って馬鹿踊りを踊り、しらふの時はうそをついて過ごす。ところが、彼はしらふの時とひょっと面を被っている時と、どっちが本當の自分であるかが分からない。平吉は死ぬ直前に自分の真の顔をさらけ出すことになる。その顔は日頃とは打って変わった姿であった。打って変わった姿というより<ふだんの平吉の顔ではなくなっていた。>と作者は記している。彼の本當の姿はあいきょうもなく、剽軽でもなく、話もうまくないものであったのである。彼は一生を酒と嘘というひょっとこの面を被って過ごしてきたわけであるが、死際にやっとその面をはずしたわけである。世渡りのために自分自身を隠して酒と嘘で生きてきた平吉には、もはや酒と嘘のひょっとこ面は要らない。平吉の最後の姿には現代人の哀れな姿が投影されており、自分の本當のアイデンテイテイを喪失し生きていく現代人の姿が窺われるのである。
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