稿では田村俊子のあきらめを従来の挫折した女の物語という解釈から離れ、作中の特徴ある家族関係に焦点をあてて考察してみた。主人公の冨枝の三姉妹は今は染谷と荻生野、そして志野という別の姓を持ち、それぞれの生活を営んでいる。現在冨枝は姉の都満子と同居しており、妹の貴枝とも頻繁に接触している。一方、都満子と貴枝は都満子の夫緑紫をめぐって微妙な関係になる。冨枝は男(夫)に従属的な姉とは逆に姉妹愛を強調し、妹の肩を持つ。ここで女同士の絆とは當時の男性中心社会の中で女としての自分を確認するひとつの方法になる。次に作中に登場する冨枝姉妹の継母お伊予と貴枝の養母お埒の二人の母との母子関係を分析した。彼らは血縁ではなく、制度的、情緒的な絆を中心に構成されている家族である。何より女性だけでの家族は一般的な男性戸主の家父長制の社会では異色的であるともいえる。中でも冨枝が帰郷して女戸主になろうとするのには注目に値する。それは冨枝が女であるがゆえに自分の夢をあきらめるという単純な解釈より、むしろ社会的、制度的環境の中で女としての役割の範囲を広げていくという意味であろう。つまりあきらめは「自己」を追求していく新しい女性像と多様な家族の構成を通して當時の男性中心の家父長制社会において克服の可能性を提示している。
1. 들어가는 말
2. 본 론
3. 나오는 말
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