학술저널
本稿では『道化の華』における〈道化〉とからんでのその主題と、作品の限界点及び批判について考察してみた。『道化の華』でまず表面上に浮かびあがってくる世界は、女とともに入水心中を企て、一人だけ救助された35歳の青年大庭葉蔵の四日間の療養生活の顛末である。青年達はことが重要であればあるほどその言動はむしろ軽薄としか映らない姿をとり勝ちである。内心の空虚や哀しみを率直に伝えようとすれば言葉がそれを裏切り、意識のどこかで欺瞞をかぎつけるからであり、完結性など決してないことを知悉しているからである。 その主題は、虚の世界の中に「永遠の愛と悲しみ」を、真善美を現わしたものであった。それは、芸術を、実利的巧利的なものとはっきり断ちきった姿勢である。芸術は、実生活には直接には役立たないもの、しかし、「美しさ」「キレイ」さ、「やさし」さによって、人間の心を慰め、癒すものだとしているのである。
〈要旨〉
Ⅰ. はじめに
Ⅱ. 〈道化〉とからんでの主題
Ⅲ. 作品における限界点びその批判
Ⅳ. むすびに
【参考文献】
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