本稿は、16世紀末口語的といわれる『天草版伊曽保物語』と『天草版平家物語』の形容詞イㆍキㆍシ形の分析をとおして両文献の口語化の程度と性質を考察したものである。考察の結果、形容詞イ形の連体用法の出現率は両文献ともに高く大きな差は認められなかったのに対して、形容詞イ形の終止用法の出現率は『天草版平家物語』の方が低かった。これは、すなわち形容詞シ形が両文献のうち、『天草版平家物語』により多く残っており、広い範囲で使われていることに起因することが分かった。また、その理由は両文献の序に書かれた作成目的の違いからも窺うことができた。両文献の序をみると、『天草版伊曽保物語』が、「日本の言葉稽古の為に便りとなるのみならず、善き道を人に教へ語る便りともなるべきものなり」としているのに対して、『天草版平家物語』は「この国の風俗を知り、ことばを達すべきこと専らなり」としている。序から、『天草版伊曽保物語』が、日本の言葉を稽古して使うところに重点がおかれていたため、当時の文法事情をよく反映させながらも実践のための運用の面が強調される標準的な言葉づかいが要求され、規範的な口語の語形を求めたのに対して、『天草版平家物語』は、当時日本のことばを達し、風俗を知るところに重点がおかれていたので、当時の文法事情をよく反映させながらも、格調ある表現のための多様な形を提示する必要があったと判断される。
일본어요약
Ⅰ. はじめに
Ⅱ. 形容詞イ形とキ形の連体用法
Ⅲ. 形容詞イ形とシ形の終止用法
Ⅳ. おわりに
参考文献
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