本論文は『源氏物語』の宿木巻に新たに登場する今上帝の女二宮を対象 に、とくに浮舟物語におけるその意義や物語への影響を探ったものである。物語は在位中の帝の内親王の降嫁という当時としては異例の出来事を通し、これが単に薫だけに関わる問題ではなく、大君亡き後の宇治十帖の展開において大きな意味を持っていることを丹念に描いている。つまり、女二宮の降嫁は以後の物語の連鎖的展開の始発点となり、物語の最後の女主人公である浮舟を物語に登場させる結果をもたらす。それとともに、多面的な薫の属性や平安時代における女性の不安定な境遇なども表している。 また蜻蛉巻の女二宮の逸話は、京の日常生活ともいえる女二宮との関係からも満足することができず、都での居場所をなくした薫の行方は結局浮舟しかないことを物語っている。しかしながら、薫が実父柏木とも重なる屈折した色好みの持ち主であることを確認することで、薫と浮舟の未来にけっして幸せな結末が待ってはいないということも暗示している。以上の分析を通して浮舟物語と女二宮の深い関連性を究明することができたと思われる。
일본어요약
1. はじめに
2. 平安時代の婚姻制度の特徴
3. 女二宮の降嫁が意味するもの
4. 蜻蛉巻における女二宮の逸話と薫
5. 蜻蛉巻の意義
6. おわりに
参考文献
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