本稿は2015年ユネスコ世界遺産登録のために長崎市と長崎県が拍車をか けている端島、別称軍艦島をめぐって地域でどのような記憶生産と政治が行 われているのかを異なる立場を取っている二つの資料館を中心に論じた。岡 まさはる記念長崎平和資料館と軍艦島資料館がその二つの資料館である。前 者は太平洋戦争期間中端島で強制労働をさせられた朝鮮人の記憶を綿密に採 録する形で資料館に展示していた。また、この資料館は日本政府はもちろん のことで、戦犯企業として三菱を取り上げ、戦後補償を訴えていた。一方、 軍艦島資料館は端島を輝く近代歴史が開いた発祥地、あるいは懐かしい故郷 として展示していた。しかし、ここに削除されている部分があり、それは強 制労働で亡くなった朝鮮人の記憶であることが認められた。尚、この資料館 は最近流行っている日本の右傾化が投射されている場として働いていた。と いうのは、展示している内容が三菱を皮切りに多数の企業の後援で新しい歴 史をつくる会が作り出した新しい歴史教科書の内容と軌を一つにしていたた めである。本稿は一つの場所をめぐった異なる記憶が生産される過程を追跡 したが、平和資料館の個人記憶は、新しい歴史と国家正体性の作りのために 用いられている軍艦島資料館の集団記憶に龜裂を加えることができるし、ま た、平和共存の可能性が潜在していることが明らかになった
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