
「踏歌」とは足で地を踏み、拍子をとって歌う集団舞踏で奈良時代後半から平安初期にかけて節会として宮廷に定着する。その歌舞を担う人の性別によって「男踏歌」と「女踏歌」に分けられるが、『源氏物語』のなかには当時すでに廃絶されていた「男踏歌」のみが、しかもひじょうに詳しく語られている。それはたぶん多用な設定や場面の構成が可能であった「男踏歌」自体の魅力と宇多天皇によって復興され、いわゆる聖代なる延喜ㆍ天暦の間に行い続けていた「男踏歌」に対する憧れという側面から考えられよう。 「男踏歌」の描写の特徴は踏歌自体の様相は史実に徹底的に基づき、忠実に再現しているが、それを単にそのまま踏襲するのではなく、そこに作者の想像力を加え、物語の論理に従った劇的要素を巧みに取り入れることで、すこぶる印象深い場面として作り上げている点である。それによって光源氏と六条院の栄華、源氏と玉鬘とのあやにくな関係、蔵人少将の挫折と喪失感が物語のなかで具現できたのである。本稿は紫式部の年中行事を含む先行資料の受容と変容の基本姿勢を「踏歌節会」、とくに「男踏歌」を通して考察したものである。
일어요약
1. はじめに
2. 「踏歌節会」の詳細
3. 『源氏物語』にみられる「踏歌」の特徴
4. 「男踏歌」描写の意味について
5. 終わりに
参考文献
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