本研究の目的は、日本におけるアクティブラーニングの導入と展開について考察し、その事例として京都大 学高等教育研究開発推進センター(以下、センター)の研究と実践を提示することである。本研究で取り上 げるセンターは、1994年に京都大学内に設立された教育研究施設である。設立されてからアクティブラー ニングに関する研究及び実践に活発に取り組んできており、日本におけるアクティブラーニングを理解すること にあたって土台になり得る施設である。日本社会は、1990年だに入り、高度経済成長期の終焉に伴い、 長期的な経済的低迷に直面した。こうした変化は、日本社会が、知識を習得して再現することより、習得 した知識を再構築してイノベーションを見い出すことを重要視する社会にシフトする契機となり、「教育政策の 変化」を促した。一方同時期、日本の各大学は大学入学者数の増加によって、学生たちの基礎知識、 学習方法、動機、ニーズの多様化のような「大学入学者の変化」を経験していた。このような変化によっ て、大学の教員たちは、従来の一方向的な教授法では授業が難しいと感じていた。大学内部では、自然 に新しい教授法が求められ始めた。以上の「教育政策の変化」と「大学入学者の変化」を背景に導入 が進められたのが、アクティブラーニングである。現在、各大学内でアクティブラーニングに関する鳥雲とし ては、主に教授開発、反転授業、高大接続をあげることができる。将来、アクティブラーニングは高等教 育段階のみならず初等中等教育段階にまで拡散すると予想される。しかし、アクティブラーニングの導入に ついて、アクティブラーニング型授業に参加した学生たちに対する評価ツールの開発、アクティブラーニング 自体の効果を検証するツールの開発、アクティブラーニングが有する人為性などの課題も指摘されている。
Ⅰ. はじめに
Ⅱ. 2つの変化とアクティブラーニングの導入
Ⅲ. アクティブラーニングの展開
Ⅳ. 展望と課題
Ⅴ. おわりに
謝辞